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科学的

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科学後退国

さぼ郎
2020.10.20号のNewsweekに日本の科学が後退している事情を特集していました。

日本学術会議に対する政府の無意味(?)あるいは無謀な干渉(介入)が世間をしばし、騒がせていますが、その意味ではタイムリーな企画です。

まず、学術界の「闇」として2018年、2019年にサイエンス、ネイチャーで論文不正問題が取り上げられ、論文撤回数ランキングとして上位10人うち、4人が日本人研究者であることを指摘し、日本の研究体質を批判しています。

img01 不正

なんと上位10人の撤回論文の下図の半数を超える本数の論文が提出後、撤回されています。

ワシントン大学での調査によると1940年以降の医学・生物学文献データベースに収録された論文から約千本の論文が撤回されているのだそうですが、その4分の3をアメリカ、ドイツ、日本、中国が占めているのだそうで、論文撤回問題は日本だけの現象ではないようです。

不正が起きる背景として、
研究費の獲得競争
ポスト獲得競争
功名心の肥大化
倫理観の欠如
成果主義
自浄能力の希薄化
学術界の構造的欠陥
体質の問題
などが挙げられています。

しかし、上位10人のうちの4人が日本人研究者で、上位10人の撤回論文の半数以上が、その4人によって撤回されているのは、日本が持つ、研究現場の事情を反映していることは明らかなようです。

特集では、その原因を一にも二にも「資金不足」としています。

img02 資金不足

アベノマスクやMMTなどと景気の良い話がある一方で、借金まみれの日本政府には未来への投資である科学技術の研究に回すお金がないのだそうです。

大学、研究機関の人員削減で研究者は就職難に苦しみ、大学院博士課程は空洞化するという循環が起き出しているようです。

2004年に大学を法人化して以降、政府からの交付金である大学運営費公費金を減額され続けていることで経営難に直面しているらしいのです。

減額の代わりに提示されたのが科学研究費補助金という「競争的資金」で、研究を競わせて成果の有りそうな研究に集中的に資金を投入するという、竹中平蔵あたりが考え出しそうな政策だそうです。

その結果として、
基礎的経費削減のため若手研究者の雇用ができない
教員の減少により学生指導の負担が増加する
外部資金を当てにしなければ研究ができない
競争的資金獲得のための事務作業に忙殺される
というような悪循環に陥っている。

1990年代から国立大学の研究開発費総額は、ほとんど増額していないようです。海外を見てみると、
中国:11.8
韓国:4.3
アメリカ:1.5
に対して、
日本1.3
である。

国立大学法人化によって大学研究者の研究時間は25%も減少しているとのこと。その結果、論文総数は下降の一途をたどっている。

img03 研究

世界の論文数の推移を見ると、1981年の40万本から2015年の140万本へと増加しているにも関わらず、唯一、日本だけが論文数を低下させているようです。

2000年には日本の論文数は世界第2位であったものが、現在では5位に降下しているとのこと。

大学院博士課程への進学者は減り続け、ピーク時の半数に減ったと推定されるような有様になっているようです。進学してもその先のポストがなければ当然の帰結でもあります。ポストは、なんと、博士号取得者の7.5%だけだそうです。

研究費の不足と不安定な身分がデータ改ざんや不正論文へと向かわせていることは間違いがないようです。

ノーベル賞の受賞年と受賞理由となった研究発表には25年のタイムラグがあると推定され、受賞者のシェアと被引用論文数のシェアには相関があるとされています。

そこから推察すると2040年ころのノーベル賞受賞率は3%程度になり、自然科学系受賞者が6人とすると0.18人となり5年以1人くらいになると見込まれます。

img04

政府に求めるのは、日本学術会議の予算を4億円削るような、6人排除を正当化するかのようなゴリオシをするのではなく(それならアベノマスクの総括でももしたほうが良い)、
「競争的資金」のようなばかげた政策は即刻辞める
自由に使える研究費を増やす
研究と教育を分ける
海外からも研究者を受け入れる
このような政策転換をしない限り、今の日本の政治同様に先行きは真っ暗になってしまうのも時間問題のようです。

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