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確率思考の戦略論

さぼ郎
Clotaire Raphaille博士
子供が言葉やアイデアを学ぶ時、同時にそれぞれの言葉やアイデアはある感情が付随し、全体としてある文化圏において特定の意味合いを持つようになり、これらがそれぞれの文化の無意識層となる。その文化圏で育った人々の行動に影響を与える。

博士は、無意識化した意味を「コード」と呼ぶとして、この「コード」にマッチした商品サービスを提供することが効果的であるとしていますが、単にマーケティングの次元の話ではなく、サブカルチャーの原点を捉えていると思います。

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後半を書いているヒトが紹介している話ですが、妙に得心のいく話だと思いました。ちなみに、ネットで調べてみても博士に関する日本語の情報は殆どありませんでした。

で、その話は「確率思考の戦略」という本の第5章の中に書かれています。この本を図書館からずっと借りていました。4月、5月と図書館が閉館になる前に借りていたので、6月10日にやっと返却してきました。

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その間に、「リブラの正体」「ジョブ理論」という、これまた結構厚い本も借りていたのですが、丸々2ヶ月借りていたので、読んでしまったので、とりあえず「確率思考の戦略」も手に取ることにしました。

二人の人で共著しています。ふたりともアメリカのP&Gでマーケティングや数値解析のような仕事をしていたようで、一人が大阪のUSJに転出して、USJがハリーポッターをやるに際して採算が合うかを検討するために元の同僚をUSJに呼んで分析した経過を出版しています。

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嫌だな と思ったのは、ハードカバーということと、各ページが厚紙のように分厚い紙に印刷している点に引っかかりましたが、ともかく図書館が閉まっているので読むことにしました。

前半を書いている人の論調も少し辟易とする感じがあって途中でやめようかと思ったのですが5章から、後半の書き手になると読みやすくなって、ともかく最後までは読みました。

といっても、後ろの3分の1は、数式の説明なので、その部分は目も通してはいません。

数字をイジクル式のマーケティングに関しては「ジョブ理論」のクリステンセンは否定的な感じだったように思います。

ともかくUSJでの「ハリーポッター」が成功したので、その成功には、著者の二人の分析の成果であるという論調なので、成功体験として勢いがある感じです。基本的にはP&Gでの経験がベースになっています。物販とアトラクションでは、販売形態が大きく異なるので、手法が同じではないような気もして、ちょっと違和感がある部分もあります。

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目新しい言葉がたくさん出てきます。

プレファレンス(Preference):ブランドに対する好意度
A.ブランド・エクイティー(ブランドの正当性)
B.価格
C.製品パフォーマンス
プレファレンスは、上記の3つで決まるのだそうです。

エボークト・セット(Evoked Set)
購入候補にいくつかのブランドがある場合は、プレファレンスによって購入確率が決まる
引き起こすこと、想起されること

シェアは、市場全体のプレファレンスによって決まっている。

戦略としては3つある
①自社ブランドへのプレファレンスを高める
②認知を高める
③配荷を高める <ー これはUSJには関係なさそう?

質的成長をすべきなのは①で、②③は量的成長によって直線的にあるレベルまでは伸長させることができる。

USJの認知を上げるために本を出版したらメディアからの取材が増えるようになった。決定打は安倍晋三とキャロライン・ケネディが2014年にUSJに来たこと としていますが、安倍晋三が行ったからと言って「認知」が上がるのは短絡の様な気もします(昭恵さんだったらもっと認知が上がったかも)。

マス・マーケティング効果が絶大であることとして、認知を全国区に広めることができた。

プレファレンスを伸ばす戦略としては、
①ファンを増やす
②ファンの熱烈度を上げる

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一般的には①のほうが成功確率を上げられる。

A.ブランド・エクイティ
ブランドが持っている価値のこと
ブランド・エクイティは競合との相対で決まる
競合に対する強みと弱みを明確にする
ようは、ポジショニング。

そこで重要な要素が「差別化」。ポジショニングと差別化は、結局、ファンを増やすために不可欠な要素となる。

B.製品のパフォーマンス
品質、もしくは性能。
製造者が決めるのではなく使用者が決めること。ここを間違うことが結構多いので、あくまでも消費者目線を忘れずに製品チェックを怠らない。

C.価格
価格を下げるしかプレファレンスを上げられないならば、その商売はやめる。

目的があっても、そこにたどり着く道筋がしめされていなければ、単なるスローガンでしかない。

リーダーに求められる資質は、感情が意思決定の邪魔にならない性質があること。目的達成のためには迷うことなく行動できることが必要。

反対にあって妥協案を模索するようではリーダーには向かない。必要なことは、調和ではなく、組織にとって正しい決定を押し通すこと。決断できなければリーダーになってはいけない。

アングロサクソンには、合理的意思決定できる人材が多い感じ。ちょっとくらいエゲツなくても目的さえ正しければ平然と行え、勝ち負けにこだわれるかが違いとなってくる。

だから、ミッドウェーで負けた!

二人は数学の専門家だそうで、数学を使ってマーケティングや調査分析をしてきたスペシャリストであることを自負しています。

では、ハリーポッターをUSJのアトラクションにすることでどれだけの観客を動員できるかの予測はどのようにして行ったかというと、「ピーターパン(USJ:2.4%)」「スパイダーマン(USJ:2.9%)」「スター・ウォーズ(TDL:3.3%)」の映画の動員数とテーマパークの動員数を参考にして予測しています。

ハリー・ポッターの映画の観客動員数は延べで7400万人。スターウォーズの映画動員数とテーマパークへの動員数が3.3%なので、そこから推測される数字は240万人になります。

ただし、スター・ウォーズは東京デズニーランドでの興行だったので、少し割り引いて「200万人(2.7%)」と予測したようです。

実績は「220万人(USJ:3.0%)」。もし、TDLで興行していれば「260万人(TDL:3.5%)」は固かったと言えそうです。

これなら難しい数学の分析は、やっぱり不要ということになりそうです。

格言として、2011年プレジデント8月1日号

You don't know what you don't know.

これは、気候変動なども同様で、どのようなサブカルチャー、サブシステムが状況と形成しているかのすべてを知ることはできないことを示しています。

ジョブスに「iPhone」が売れるか、しくじるかの数値解析のレポートを二人で持っていったら1分でクビを宣告されるでしょう。

過去のデータがなければ数値解析などは、なんの意味も持ちません。AIが予測できるのは「未来」ではなく、人間がいままで「気づき」を持てなかった、いわば盲点を見つけるくらいのものでしかないと思います。

それでも、後半の著者のまとめの部分の話は含蓄に富んでいました。


学ばない」「学べない」組織は衰退する。人類の最大の優位点は「学習能力」。

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学びを抽出して組織全体に共有するプロセスが個人を成長させ、組織を成長させていく。

一人あたりのPOV(Point of View:見方)の総量が、相乗的に増大し加速することを企業の成長という。つまり、企業の成長とは人的資源の成長のことである。

有能な人間をコマとしてヘッドハンティングしてきても、その人材を活かすために組織自体が変わらなければ、その人材が、いかに有能な人材であっても組織力にはなりにくい。

おっしゃるとおり!

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