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科学的

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関節リウマチとコロナウイルス

さぼ郎
平野俊夫・量子科学技術研究開発機構理事長(73)が1日までに共同通信のインタビューに応じ、新型コロナウイルス感染者の命を脅かす重篤な肺炎は免疫の暴走が原因で、この仕組みに関与するインターロイキン6(IL6)という物質を薬で抑えることで治療が可能になるとの見方を示した。
                  (東京新聞 2020年5月1日)
という記事がありました。このインターロイキン6(IL6)を見つけたのが平野俊夫さんです。

img01 平野俊夫

自己免疫疾患の流れ
インターロイキン6が過剰に分泌される
滑膜の線維芽細胞に血管内皮増殖因子を分泌
不必要な血管が作られ滑膜が肥大化(腫れ)
マクロファージが滑膜に浸潤
破骨細胞に変化する

本来は破骨と骨芽はバランスが取れているが、このバランスが崩れることにより骨が破壊されるのがリウマチということのようです。

アクテムラ

そこで登場したのが「アクテムラ」。アクテムラインターロイキン6の受容体と結合しシグナルをブロックする。

img02 リウマチ

細胞表面の細胞膜にある受容体と情報伝達物質が結合すると細胞膜を貫通して消防中心部へシグナルが伝わる。リウマチのように炎症が起きている幹部には受容体が増加している。

アクテムラは人間から取り出したインターロイキン6をネズミに注入することでネズミの免疫が抗体を作る。この抗体を人間に注入すると同様に異物とみなして抗体を捕まえる抗体ができてしまう。

そこでネズミの抗体と人間の抗体を合体させたキメラ抗体を作り、主として定常領域を人間のものとすることで人間抗体とするもの。

当時の日本では抗体を使う治療薬は倫理委員会から承認される可能性が皆無だったが、アメリカで抗TNF抗体によるリウマチ治療薬の実績が伝わることで承認される空気が生まれた。

インターロイキン6受容体抗体の研究成果に対してネイチャーなどに掲載されたが、中外製薬以外は感心を示さなかった(後に中外製薬はロシュに買収される)。

キャッスルマン病(難病指定)もインターロイキン6が大量に検出され、国内初の抗体医薬として「アクテムラ」が開発された。

アクテムラ」は日本で開発された唯一の国産生物学的製剤で、最先端のバイオテクノロジー技術によって国内で製造されているとのこと。

2013年の記事ですが、
体重1kg当たり8mgを投与しますので体重に応じて使用する薬の量が変わります。80mgバイアルで約1万8千円、200mgバイアルで約4万4千円、400mgバイアルで約8万8千円です。
さらに、2017年には既存治療で効果不十分な▼高安動脈炎巨細胞性動脈炎―に対する効能・効果の追加が2017.8.25日に承認されたとのこと

抗体医薬は「」の治療にも注力されている。抗癌剤は増殖する細胞を狙うので、免疫細胞や毛髪や皮膚も対象となってしまう。

HER2

乳癌にかかるとヒト上皮増殖因子受容体2型(HER2)を標的にした抗体医薬で治療ができるようになった。抗体の相補性決定領域(CDR)をネズミのものとしてそれ以外をヒトのものとしたヒト化抗体「ハーセプチン」によって3割程度の乳癌に有効である。

img03 her2
CDRは、それぞれB細胞およびT細胞によって作られる免疫グロブリン(抗体)およびT細胞受容体中の可変鎖の一部である。これらの分子は相補性決定領域で特定の抗原と結合する。分子で最も変化しやすい部位であるため、CDRはリンパ球によって作られる抗原特異性の多様性のために極めて重要である。
CDR」とは、端的にいえば、抗体の先っぽの一部を構成する分子のこと。

リツキサン

悪性リンパ腫は、白血球のうちのリンパ球が癌化し、リンパ節や臓器に腫瘤ができる病気で、癌化している細胞がリンパ球のうち、T細胞であるか、B細胞であるか、あるいはNK細胞であるか免疫表現型によって治療法が異なる。

img04 リツキサン

リツキサンは、Bリンパ腫の細胞表面にある「CD20」を標的にする抗体医薬。CD20に抗体を与えると癌化したBリンパ球が死滅する。

可変領域はネズミの抗体で定常領域はヒトの抗体をキメラにして作っている。

抗体がCD20と合体するとマクロファージなどの免疫細胞が集まり癌化した細胞を攻撃する。

アバスチン

血管新生はもともと身体に備わった正常な仕組みで、特に母親のお腹の中にいる胎児に血管ができるときには、なくてはならないもの。ただ、大人になると必要な血管はすでにできあがっているため、身体が必要とするときだけ利用できるようにうまくバランスがとられている。

img05 アバスチン

ところが、癌細胞が異常増殖するために養分が必要となり異常な血管新生が起こる。

癌に特有のこととして血管内皮増殖因子(VEGF)という情報伝達分子が毛細血管を新たに作る作用が著しいのでVEGFと受容体が合体してしまえば癌細胞の増殖を抑えることができるはずであるが、そのことですでにある癌細胞を消滅させることができるわけではない。

よって、抗癌剤と併用する。

モノクロナール抗体

抗原決定基は、様々な形をしたモノクロナール抗体が混じり合ったポリクロナール抗体となっている。

img06 モノクロナール抗体

免疫が作り出し抗体は億を超えるとされており、目的の抗体を作り出すBリンパ球を見つければモノクロナール抗体を取得できるはずと岡田善雄は考えた。

岡田は腹水癌を起こしたネズミにアッカーマン変異体というインフルエンザウイルスの一種を打ち込むと癌が消えることを発見した。

そおこで岡田は、センダイ・ウイルスを使って腹水癌を起こしたネズミに打ち込むことで癌細胞の細胞膜が消えて細胞同士が融合していた。この発見が1953年当時で、ワトソンとクリックがDNAを発表したという時代。

この発表を受けてオックスフォード大学で人間の細胞とネズミの細胞を融合してキメラ細胞を作成しネイチャーに発表した。

正常な細胞と癌細胞を融合すると正常な細胞に戻った。こうした研究から染色体や癌抑制遺伝子の研究へとつながっていく。

Bリンパ球は骨髄にある造血幹細胞から生まれ脾臓に移動して病原菌の侵入に備えている。ミルシュタインは脾臓から取り出したBリンパ球をセンダイ・ウイルスを使ってネズミの骨髄腫細胞と融合させたら増殖を始めることを発見し、ノーベル賞を受賞した。

img07 岡田善雄

そのもととなる発見をした岡田善雄は文化勲章を受賞したがノーベル賞にはならなかった。

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