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アルヴェルとエルグランドと草枕

さぼ郎
エルグランデ
「オートックワン」の記事にリンク ↑

アルヴェル」とはトヨタの「アルファード」と「ヴェルファイア」のことで、対する「エルグランド」は、日産です。

記事では、2017年度はアルファード/ヴェルファイアの合計8万7940台に対し、エルグランドは7548台。これだと10分の1以下です。

エルグランドの車自体には目立った弱点もないらしいのです。で、売上の差に大きな影響を与えているのが、
トヨタの営業担当はベテラン揃いで、地元に密着している。元気なお客さんでも、たいてい「誰々さんのお坊ちゃん」。お父さんを知ってれば、普通に付き合えます。
日産も20年前までベテランの営業マンが揃っていたけれど、赤字やルノー傘下になったゴタゴタ、さらにリーマンショック以後、国内販売体制は縮小均衡策をずっと続けた結果、営業マンも入れ替わってしまった。元気の良い人がエルグランドの試乗に来たら、ギゴチない対応になってしまう。
とのことです。

エルグランド」が巻き返すためには日産の専売である「e-POWER」を搭載すれば巻き返せるかも知れないけれど、現状の販売台数において、新たな開発をするという決断をするかがポイントだと記事は締めくくっていました。

片方では、スピーカーに話しかければ音楽も聞けるし掃除機も操作できるし、欲しいものだって買えるのに、結局は営業マンのスキルというはなはだアナログな、かつ人間的なところに帰結するのであるなら、「AI」だって必要とされる場面はたかが知れています。

そう言えば、昔の職場の先輩だった原さんの隣の旦那さんが自動車の販売ディーラーにお勤めで、そこで扱っている車種しか買えないとぼやいていました。世の中は、意外とそんなことで動いてもいるし、つながってもいるように思えます。

セールス

渋谷に行こうが、新宿に行こうが、池袋に行こうが、沢山の人で溢れていますが、知っているヒトなどは、まずいません。すなわち、この世でお互いが知っていて、気脈が通じるということは、実はとても貴重なことなのだと思います。

その昔に聞いたことですが、「ベンツのトップセールスは、特別値引きなどをするから、そのヒトから買うのではない」という話を聞いたことがあります。では、「信頼」なのか というと、もちろん、信用ならないヒトからは買うはずがありません。

しかし、おそらくですが、「気脈が通じている」「気心がしれている」ことがポイントのような気がします。

モノを売るというのには、やはり、「いい製品を作る」というのは、一つの側面でしかなくて、プラスアルファやベータが不可欠なのだと思います。

よく売れる本は、書いた人が有名であることだそうです。ヘアヌードの写真集も、モデルがキレイなことよりも、有名な人が脱いでいることが、売れ行きに繋がるのだそうです。

ヌード

有名になるか、はたまた、顧客(潜在含む)と気脈を通じる手立てを考えるかは、ネットの時代であっても、重要なポイントになるようです。

よくネットマーケティングではメルマガで「信頼」を獲得するのだとまことしやかに言いますが、「信頼」もインターネットの時代になって値下がり気味です。

「日本橋を通る人の数は、一分に何百か知らぬ。もし橋畔に立って、行く人の心に蟠まる葛藤を一々に聞き得たならば、浮世は目眩しくて生きづらかろう。ただ知らぬ人で逢い、知らぬ人でわかれるから結句日本橋に立って、電車の旗を振る志願者も出て来る。」

夏目漱石
青空文庫「草枕」にリンク ↑

と、これは漱石の「草枕」です。久一さん(那美さんのいとこ)が出征するシーンで舟で町まで送る場面を書いています。「出征」というと、普通に太平洋戦争を考えてしまいますが、実は「日露戦争」なんですね。

日露戦争は明治37年から始まりました。漱石は慶応3年生まれ。翌年に明治になります。「草枕」は明治39年に発表されています。なぜ、タイトルが「草枕」なのか、まだ不明ですが、わかるまで読み込まなければと思っています。

江戸の香りが、どんどん西洋化され、道義の秩序が経済の論理に塗り替えられていく人心から隔絶した世界で世相を睥睨している中にも日露戦争が入り込み、満州で一旗あげるという輩も出てくるなど、秩序の新旧、世相の遠近を客観的に「草枕」をしながら画工の目で捉えている驚嘆すべき小説だと思いました。


智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通とおせば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。

この一節を眼にすると、どういうわけか渥美清さんを思い出します。

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