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ジョブ理論《2》

クリステンセン

さぼ郎
章のタイトルは「プロダクトではなくプログレス」となっています。

プログレス(progress)とは、有り体に言えば「進歩」とか「前進」という意味です。章のタイトルを日本語にすれば「商品よりも前進」となりそうですが、ほとんど意味が通じません。

頓活

少なくとも顧客をつかまえて「進歩」などというのは、学習塾ぐらいのような気がしますが、クリステンセンはハーバード・ビジネス・スクールの先生だから、学習塾と似た認識なのかもしれません。

顧客は「解決」ために「プロダクト/サービス」を手に入れようとするわけで、訳では「手に入れること」を「雇用」としていますが、「雇用」となると「employ」ですから、訳者が意訳しているような気もします。

頓活

ここで「ジョブ」を「特定の状況で遂げようとする進歩」などと書かれるとかえってわかりにくくなります。ようは、ある状況の中で解決しようと考えて手に入れようとするプロダクト/サービス」を考える場合、その選択に至るプロセスに着眼しなければならないと言うことです。

一般には、何かを解決するためにプロダクト/サービス」が商品として流通しており、プロバイダーやコンサルタントは、自己のプロダクト/サービス」の他に比べた競争優位のために、他との違いのみに着目した主張をしがちです。

これって、米ロ(最近では中国も)の核競争のようなもので使いもしない兵器の性能を上げたところで相手が「恐れ入る」ことはなく本来の抑止力とは違う方向(軍拡)に進んでいるようなことと似ている気がします。

頓活

真っ先に考えなければならないのは、顧客の「状況」と「解決」すべきジョブにフォーカスしなければならないわけです。

多くのケースでプロダクト/サービス」は顧客の抱える状況に対して余剰・過剰があり、しかも、顧客の抱えるジョブに対して機能的側面にウェートが置かれていることが一般化している気がします。

しかし、顧客にとって重要なことは案外、機能面よりも感情的側面や社会的側面の解決で有ることが少なくありません。

例えば「文書管理」と検索してみてください。これでもかというほどにスグレモノの文書管理システムや倉庫業のアピール記事が表示されます(2020.4.17現在で1億2200万件ヒット)。

AIだとかOCRだとか決済だとか尾ひれがたくさんついていますが、顧客は保存期間が経過した文書を廃棄し、執務室から不要な文書を書庫に追い出し、執務室の美観を整えることだけを「ジョブ」と捉えているかもしれません。

所詮、いかなる「システム」も顧客にとっては単なる「ツール/道具」でしかないと提供者は考えるべきだと思いますが、どうしても「軍拡(過剰性能)」に走りたがる傾向は否めない気がします。

ジョブの定義

  • 特定の状況で追求する向上
  • 向上を可能にし、その解決を困難にしている状況を解決する
  • 機能面重視ではなく感情面を重視する
  • 日常の中で発生する文脈を説明する「状況」をきっちり定義する
  • 解決策は「状況」の中にある
  • 解決すべき「状況」は継続的であり反復して発生している

ジョブでないもの

状況」と似ている語彙に「ニーズ」があるとしています。著者は「ニーズ」をジョブではないとしています。

例えとして「空腹」は、食欲を喚起する「ニーズ」ですが、「何を食べるか」に「ジョブ」があると指摘します。

頓活

「セグウェイ」という乗り物がありましたが、多くの人のジョブを解消することはできていません。

朝の出勤時に「ミルクシェイク」を買う人の例が書かれていますが、ようは、車を運転しながら手が汚れず、そこそこの時間をかけて飲めることが購入者にとってのジョブ解消だったという指摘を数ページにわたって書いています。

いろいろな書き方をしており、そのためにとても抽象的な印象を受けてしまいますが、端々に著者自身の着想にご満悦な感情の高ぶりが鼻につきます。クリステンセン自身が、この本を読もうとする読者の「ジョブ」を理解していない気もしますが、とりあえずは「プログレス(前進)」します。

とどのつまり「ジョブ」とは、

前に進むことを妨げる障害物を、その状況下で取り除くこと

と定義することで落着できそうです。ここからが、肝心な部分になります。
  1. そのヒトが成し遂げようとしている「向上/解決」とはなにか
  2. 苦心している状況とはなにか
  3. 改善を阻む状況はなにか
  4. 埋め合わせの行動で代替していないか
  5. 現状を向上させるための解決策/品質をどのように捉えるか
これらを解決するために必要で不可欠(余剰・過剰な品質や機能は混乱の元)な状況を理解することに最適なプロダクト/サービス」を提供するように考え直してみる事が重要です。

つまり、そこにある「ジョブ」を理解し、最良の解決策を提供できる者が競争優位を手に入れることができるでしょう。

逆を言えば、顧客において存在する解決策で充分間に合っているとするなら役に立つことはできませんので、営業先から外したほうがいいでしょう。

よくあることに「コスト削減」「効率・能率向上」は、ジョブ理論の中核を占める要素とはならず、その意味では「合理的な意思決定」に使う要素としてはいけないはずですが、この2つの要素を全面に営業展開している「プロダクト/サービス」は意外と多いように見受けられます。

その理由は明確で意思決定権者は、数字に頼ろうとするからで、提供者の立場からは実際に「ジョブ」を抱え、解消しようと努力している人の感情的側面、社会的側面に寄り添うことがチャンスに繋がるという視点で再考して見るべきでしょう。

頓活

多くの企業がいまだに自社のプロダクト/サービス」を中心にした天動説にしがみついており、大量のデータを集めAIに分析させて成功を予測しているけれど、ジョブスはビッグデータの分析から「iPhone」を生み出したわけではありません。

提供しているプロダクト/サービス」を選ぶ顧客がいるとするなら、「なぜ」それを選ぼうとするのかを顧客の状況に立って見直してみることが必要で、相関を分析するのではなく因果関係を知ろうとしなければなりません。

イノベーションは「顧客の欲求を解決するために提供する機能」にあるのではなく、「それを欲しいとする感情的・社会的側面があって、初めて機能的側面」を検討するべきなのに、多くは順序が逆であるようです。

そこにチャンスが有ると考えた人が、優位に立てるということのようです。



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