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伝記「長谷川泰」《1》

第1回

さぼ郎
長谷川泰は、天保13(1842)年に漢方医長谷川宗済の長男として新潟県長岡市で生まれた。

14歳のときには、良寛とも親交のあった鈴木文台の漢学塾に学んでいる。3年の修行の後、郷里に戻り父親から漢方医学の講義を受けている。

しかし、一方で長崎から入ってくる西洋医学の情報や、江戸から帰藩した蘭学者、鵜殿春風がいて、泰は早速、春風の門下生となり英語、蘭語、数学を学んでいる。

春風は河井継之助とも交友があり西郷隆盛とも親交があった。後に海軍大将になる伊東祐亨も長岡の春風のところで学んでいる。

天保14年に佐倉藩の堀田正睦は軍陣医学(主として外科)のために江戸から蘭学者、佐藤泰然(1804-1872)を迎え、佐倉順天堂を作る。名声は大阪の緒方洪庵の適塾と並んで天下に知られた。

文久2(1862)年、佐藤泰然の養子、佐藤尚中が長崎のオランダ海軍医ポンペについて外科手術学を習得して佐倉に規範しており、その名声は長岡の長谷川泰にも伝わり、父の許しを得て泰が20歳のときに佐倉順天堂を目指して旅立ち佐藤尚中の門下生になることが出来た。

在学は4年半に及び佐藤尚中の門人等級では41人中5番目であった。尚中は、長女シズの養子に泰を迎えようとしたが、シズはいとこの高和介石を好み、尚中はシズの求めに応じて高和介石を養子に迎え、高和介石佐藤進となる。

松本良順
1832年天保3年) - 1907年明治40年
佐藤泰然の長男は松本良順で、松本の養子になる。奥詰医師になり医学書頭取にもなる。将軍侍医になり徳川家茂の死を看取る。近藤勇とも進行があり、幕府陸軍の軍医、次いで奥羽列藩同盟軍の軍医となり、会津戦争後、仙台にて降伏。薩長軍に逮捕、投獄されるが明治2年赦免。明治4年山県有朋のススメで兵部省に出仕し、明治6年には大日本帝国陸軍初代軍医総監。

佐藤志津
1851年(嘉永4年) - 1919年(大正8年)
私立女子美術大学2代目校長
山口舜海の長女。山口舜海が佐倉の佐藤泰然の養子になったため2歳で佐藤家に入った。
董(佐藤泰然の五男、1歳年長)と共に漢籍を佐倉藩儒者岡本道庵に国学を浜野末束に学ぶ。
市立女子美術学校創設者の横井玉子を支援し、玉子が病に倒れると2代目校長として尽力し、肺炎で死去したあとは佐藤進が三代目校長として就任した。

林董
1850年(嘉永3年) - 1913年(大正2年)
12歳で林家の養子になり、横浜でヘボン塾で英語を学び、16歳で渡英。明治元年に帰国し幕府滅亡後、榎本武揚と脱走艦隊に身を投じ、箱館戦争で捉えられる。
明治3年、兄、松本良順の紹介で陸奥宗光と知り合い、岩倉使節団に随行し再度外遊。
初代駐英大使。第一次日英同盟調印。

大学
旧幕府から継承された昌平学校(儒学)・開成学校(洋学)・医学校の3校を統合し、旧昌平学校系を中心とする官立教育機関として構想された。
新政府は明治2年に大学校を作り長官に松平春嶽がつき、その後「大学」と改称されたが、大学校本校は、儒教の解釈による対立で休校のまま廃校になった。
明治2年、大学校の南にあった改正学校を大学南校(法律、理学、文学)呼び、東に位置していた医学校を大学東校とした。
当初は英国流であったが、明治4年からドイツ流になる。この過程においても、騒動があった。佐藤尚中、長谷川泰もドイツ流を推した1人として、薩長から睨まれることになる。
明治5年に東校は「第一大学区医学校」となり、ついで1874年(明治7年)5月、東京医学校と改称された。
明治10年、東京医学校は東京開成学校(大学南校の後身)と統合され東京大学の設立に至る。

司馬遼太郎の「胡蝶の夢」ー司馬凌海
佐藤泰然、佐藤尚中、松元良順、関寛斎などが登場してくる幕末から明治初期にかけての医学者の小説。主人公は島倉伊之助(後の司馬凌海)じゃないかと思われるけれど、なぜ、莊子の「胡蝶の夢」をタイトルにしているのかは全くわからない長い小説。
おそらく司馬遼太郎は莊子の「胡蝶の夢」の本意を誤って理解しているのではないかと思うところもありますが、だらだらと、史実もどきが延々と展開し、何を主題にして創造したかったのかが全く不明な小説と思います。
司馬凌海は、語学の天才。独・英・蘭・仏・露・中の6か国語に通じていたとされる。いまでいう「サヴァン症候群」のような感じで描かれていたような記憶がある。
日本語にない語は、即座に造語したとのこと。wikiによれば蛋白質窒素十二指腸などがそうであるといわれている。
結局、司馬凌海にしろ、福沢諭吉にしろ、西周にしろ、舶来語を和語にするために不可欠な素養は「漢学」であるということ。昨今の舶来語がカタカナになってしまうのは、「漢学」の素養のある教養人が不在であるということなのだと思います。

出典)「済生学舎と長谷川泰」著:唐沢信康さん 他Wiki

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