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ベーシックインカムと国民投票

さぼ郎
スイスで5日(2016年6月)、国民全員に一定額を毎月支給し、最低限の所得を保障する制度を導入すべきか問う国民投票が行われ、地元メディアによりますと、「反対が76.9%」で否決されたそうです。

スイス

仕組みは国民全員ではなく「大人」に対して月額27万円を支給する代わりに年金などを撤廃するのだそうですが、反対理由は「労働意欲が削がれる」ということでした。

ちなみに、スイスでは10万人が署名すれば国民投票ができるそうで、過去には徴兵撤廃や、所得の上限制、最低賃金を2,600円にすることなどがすべて否決されています。

とはいえ、欧州全域の抱える問題として移民問題に対して右傾化の傾向が強まっているようです。

仮に日本でやるなら年金と生活保護をやめれば、毎月払える金額は「大人」一人あたりでいくらになるのでしょう。細かい計算ではありませんが、対象を全国民にすれば月額8万円(年額100万円)で年額120兆円になります。

大人(と言っても18歳以上)だけに限定しても、3分の2として80兆円です。どこかの試算では、なんだかんだで63兆円まではかき集められるそうです。

もちろん、いまもらっている年金額や生活保護費より減額される層も有るでしょうけれど、これで助かる層がどれくらいあるのかによります。

年金

労働意欲云々の前に、現在、所得を得ている層に支給が発生する分、年金だけで生活している層が困窮します。困窮しても生活保護が無くなるわけですし、その生活保護を受給している層ですら困窮するわけですから、ベーシックインカムは、労働意欲云々の前に、成立しない公算が高いです。

むしろ、こうした制度ではなく大人(18歳以上)で、何らかの理由で月額15万円(1日5千円)に到達できない層に対して、その差額を補助するというのはどうでしょうか。

もちろん財源が必要になりますが、財源は余剰資産を保有している層から回す以外に方法はありません。とりあえずは年金額が個人で15万円以上。世帯で30万円以上受給している世帯や高額資産を保有している人々の年金、そして高額資産保有者の相続において生活に余裕のある子孫から大きく徴収するなどして、次世代の格差を是正するような方向であるなら、人数的に高額資産保有者のほうが少ないでしょうから法案成立の可能性が高いです。

フィンランドでは2017年あたりから大規模なベーシックインカムの実験を始めるとの報道がありますが、詳細は不明です。実験とはいえ、選ばれた自治体と、そうではない自治体とで格差になり、憲法違反になる可能性も否定できないからです。

誰にでも給付するという仕組みは「悪平等」だと思います。年金は権利である部分もたしかにありますが、老後の「安心」でもあるわけで、保険のような機能もあるわけです。

老後

不幸にして早逝したり、逆に幸いにして健康で長生きすることもあるわけです。そんな時に重要な事は、万が一、不測の事態で安定した老後が送れなくなったようなときにでもセーフティネットが機能して欲しいわけです。

そのためには、潤沢な資産を形成できた人とそうではない人とで逆の格差があっても成熟社会は受け入れるべきだと思います。そのボーダーはさしたる根拠はありませんが、世帯で20万円くらい、単身で15万円くらいと思います。

現役時代の徴収も、基礎年金部分は同額、上乗せ分は所得比例にして徴収するようにして、自営であっても会社員・公務員であっても共通の2階建てにすればいい。医療に関しても自己負担額が悪平等になっている気がします。高額医療であっても原則として3割負担であるべきで、その負担に耐えられない人にのみ、救済としての補助があるべきです。

高額医療

となると、資産内容が即座に分かるような仕組みが必要で、それが背番号であるべきと思います。ただし、資産内容を公開したくない人もいるでしょうから、そうした方々は相続時点で資産内容を詳らかにすればいいのであって、その代わりに最高レベルの負担をお願いし、かつ、官の救済も最低レベルにするような、選択も許すべきと思います。

消費税増税を先送りすれば財源はどうするのだという議論もありますが、まずするべきなのが、消費税増税を先送りしようがしまいが、国会議員および官僚・公務員の給与引き下げ(一律1割カットを3年ぐらい続ける)を実施するべきです。

政治資金規正法とか政党助成金など、グレーな部分が多く、それゆえに政治家になりたい人々も多く、芸能人同様に二世三世を多出しているのも、おいしいからにほかなりません。おいしいというのは、労働に対して実入りが大きい。楽な割りには収入が大きいわけで、これも芸能人と同じ構造です。

スイスのように気軽に国民投票するべきだと思いませんが、政治家自らが首に鈴をつける政策や、いかに国家のためであっても人気のない政策を実施するための仕組みがなければ、どのような不浄なことをしても「違法」ではなくなるような法律自体がおかしいのであって、それを議員が自ら自浄できないのですから、選挙以外の方策を考えるべきと思います。

民主主義の不効率を補うような仕組みが不可欠で、例えば視聴率なども全世帯に設置されているわけではありません。あの程度の代表的国民投票制度などを実験的に導入してみたらいいのではないかと思います。

清濁併せ飲むことや諦念を「成熟社会」にしてはいけないと思います。

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