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科学

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モラベックのパラドックス

さぼ郎
機械との競争」という本を読んでいます。まだ、終わりまで読んだわけではないので、とやかく申すのも何ですが、概ね、言いたいことはコンピュータがこれだけ安くて早くて進化してくると、知的労働を担ってきた中間層の就業や賃金が打撃を受けるという話です。

機械との競争
「機械との競争」のデザイン

産業革命が起きた時、機械に取って代わられた労働者層があったわけですし、アメリカにおいてもこの2世紀ほどで、90%くらいの人の労働形態が変わってきたわけです。

日本だって同じようなもので、150年ほど前はチャンバラの世界だったのですから、変貌ぶりとしてはアメリカ以上のことと思います。

侍

「カウボーイ」は未だにいるかもしれませんが「侍」はいなくなりました。

とはいえ、時代の変化に即して就業形態も資本家も、とにもかくにも対応してきたわけです。

ヘンリー・フォードが自分の自動車工場で働く労働者を見て、「機械化すれば賃金を払わなくて済む」と組合の長に言ったところ、組合の長は「そうなれば車を買う人がいなくなる」と答えたとか。

自動車販売

ワタシは永く、仕事って人の数だけあるはずと根拠もなく思っていました。だって、需要は人の消費によって喚起されるわけじゃないですか。

ところが、フォードの言うように、工場のラインをロボット化すると大きな工場があっても、働く人が少なくて済むから、資本家にとってはとても効率のよいことです。

が、労働者が常に生活の水準を守れるような賃金体系の中に置かれているなら消費も滞ることもなく社会は安定するわけですが、資本家に富が集中しても、労働者に配分がなければ消費は滞るわけです。

それがアメリカで起きているという警鐘が機械との競争」に書かれています。

そこで、「モラベックのパラドックス」です。

人工知能 (AI) やロボット工学の研究者らが発見したパラドックスだそうです。
モラベックは「コンピュータに知能テストを受けさせたりチェッカーをプレイさせたりするよりも、1歳児レベルの知覚と運動のスキルを与える方が遥かに難しいか、あるいは不可能である」---wiki
ということで、
新世代の知的機械が登場したとき、職を失う危険があるのは証券アナリストや石油化学技師や仮釈放決定委員会のメンバーなどになるだろう。庭師や受付係や料理人といった職業は当分の間安泰
つまり、コンピュータによる問題解決は、人にとって難しいと思われることを容易にこなすけれど、人にとって難しいと思われないこと、あるいは無意識に行っていることは、とても苦手であるというパラドックスです。

赤ん坊

その理由をモラベックは、「人間が抽象的思考をし推論するようになったのは、ここ10万年のことで推論と呼ぶ意識的プロセスは薄いベニヤ板のようなものにしか過ぎず、そのベニヤ板で起こることを解決しようとしているが、それを支えている感覚・運動・知覚に依存している」ことを無視して、全てを解決できるわけではないようです。

ミンスキーは「最も解明が難しい人間のスキルは無意識だと強調」しており、この解決抜きに人工知能は、きっといつまでたっても、難しいことしかできない人工知能であり続けるのだと思います。

幼児でも簡単にできる犬と猫の見極め方ができるコンピュータが登場するあたりから人工知能は様相が変わってくるのでしょう。

犬猫

たまたまニュースのタイトルに「中国の人工知能研究が日本を一気に抜き去った理由」という記事があり、「東ロボ」を開発している新井紀子・国立情報学研究所教授が寄稿していました。

新井紀子
記事にリンク ↑

なにをどのように言ったところで、まず、「東ロボ」の開発速度が遅すぎる感じがすることと、国立の機関であるということが、「情報大航海」を想起させて、成果が出そうな予感がしていませんが、やはり、中国にも追い抜かれたようです。

記事の中で「シンギュラリティ」「深層学習」という見たこともない語彙が使われていました。

シンギュラリティ」とは、日本語で「技術的特異点」というようです。wikiにも長々文書がかかれていますが、端的にいうと人工知能が人間の知能を超える事を言うようですが、ワタシは、生物の持つ基本的な力を甘く見ていると思います。

wikiで「深層学習」を調べてみると、
多層構造のニューラルネットワーク(ディープニューラルネットワーク、英: Deep Neural Network)の機械学習の事
などと書かれており、googleで猫の概念を人工知能が学習することに成功したという書き込みがあります。ウソか本当かは不明です。

個人的には、なんとなくウソっぽい(あるいは大げさな発表)ような感じがしています。どうも、人工知能というと、煙にまくような話が先行しているような気がしてなりません。

人工知能

幼児でも、猫と犬の違いを瞬時に見分けることができるので、この「容易」な能力が、自らの理解力で知能をスタックしていけるようになれば、人工知能も新たな局面に入っていくのではないでしょうか。

はたして、そんな時代が来るのかどうかは分かりませんが、コンピュータとソフトは、とどまることを知らずに進化してくるので、どのようなポジションを取るかを、よく考えて、逆手を取るようにしていきたいものです。

脳神経(ニューロン)は、受精後40日くらいすると分裂が始まり120日すると分裂が止まるのだそうです。

その間に1000億個になるとか。120日✕24時間✕60分✕60秒で割ると、なんと、1秒あたり9500個のニューロンが生成されることになります。

ニューロン
理研「ニューロン」の記事にリンク ↑

その1個のニューロンに、これまた何万、何十万、何百万ものシナプスがあって、それに軸索という回路が構成され、脳が完成するのだそうです。

本によると、3歳位までに完成するとかで、まさに「三つ子の魂」というわけです。それから、いろいろな形成が有るのでしょうけれど10歳過ぎる辺りで、生物的な発達は止まるようです。

言語の獲得能力も10歳くらいが限界だそうです。情緒の形成も10歳くらいまでに完成するのだそうですが、それは、このシナプスと軸索で構成される回路によって決定されるのでしょう。

個性とか能力は、このシナプスを結ぶ回路で決定されるようですが、シナプスが多ければよいわけでもなく、なにがどうしてどうなるのかなど、おそらく詳細は不明なのだと思います。

だから、人工知能なんて言ったところで、ノイマン型のコンピュータには、きっと限界があると思っています。

「if ~ then ~ else」で動くパソコンである限り「人工頭脳」というに値する自発的思考はできないと思っています。

そのような方向を目指すのではなく、パソコンの進化形としてマルチCPUに、キーボードに対応するCPUとは別に、検索や変換などを常に監視し、クラウド上のビッグデータとのやり取りを蓄積して、自分の「知の性質」をクラウド上に構築していくほうが、現実的と思います。

そういえば子供のころ、鰐淵晴子さんの「ノンちゃん雲に乗る」という映画を学校で見させられましたが、クラウド上に展開する「自己」のことだったのかもしれません。

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